POLISHING
新車なのに、磨くことがある。
傷があっても、残すことがある。
では、何を基準に決めるのか。
WHY WE WRITE THIS
ポリッシャーとコンパウンドがあれば、塗装を磨くこと自体は誰にでもできます。 「鏡面研磨」「徹底した下地処理」と、言葉にするのも簡単です。
けれど、何を基準に、どこまで磨いたのか。そこまで説明されることは、ほとんどありません。 基準がないまま、それぞれの感覚で磨かれている。それが、この仕事の実情です。
研磨は、塗装の表面をわずかに取り除いて、形を整える技術です。失われた塗装を元に戻す作業ではありません。 だから私たちは、磨くか磨かないかの前に、まず塗装の状態を診ることから始めます。
必要なら、きちんと磨く。
けれど、磨けるからという理由だけでは、磨かない。
FIVE PRINCIPLES
車を診る。目指す状態を決める。磨きながら確かめ、理由を伝える。 CLBは、その一連の仕事を5つの原則にまとめています。
気になっている箇所と、これからの乗り方をうかがいます。そのうえで光を当て、傷の深さと種類、塗装の状態を確かめる。車種や年式だけでは決めません。磨く必要があるのか、別の方法がよいのかを、ここで考えます。
普段目に入る細かな傷を整えたいのか。一本の深い傷を目立ちにくくしたいのか。いまの塗装の質感も残したいのか。何を改善したいかで、必要な研磨は変わります。整える箇所、残す箇所、今回は行わないこと。残す場合は、その理由もお伝えします。
同じ一台でも、ボンネットとピラー、平面と曲面、過去に補修された場所では、合う方法が違います。面の形と状態に合わせて、道具と使い方を選ぶ。工程の数より、一つひとつの作業に理由があるかを考えます。
傷や艶は、予想どおりに変わっているか。手を止めて確かめ、続けるか、方法を変えるか、ここで止めるかを決めます。手を止めているときにも、技術は働いています。
何が改善し、何が残ったのか。なぜ、その方法を選んだのか。結果と理由を、お客様と次の技術者へ渡します。次にお越しいただいたときも、自動的に磨き直すことはしません。前回から何が変わったかを、また診るところから始めます。
診た結果、研磨をおすすめしない場合や、いったん保留する場合もあります。 そのときも、理由をお伝えします。
REPRODUCIBILITY
技術者の多くは、頭の中に焼き付いた「完成した艶」を目指してポリッシャーを回します。 思ったとおりにならなければ、もっと磨く。それでも変わらなければ、さらに磨く。 こうして時間だけが過ぎ、塗装だけが減っていきます。
原因は、根気が足りないことではありません。 方法が、その傷に合っていないのです。
研磨は、傷を「消す」のではなく、
より浅い傷へ、順に置き換えていく作業です。
※ 同じパネルを養生テープで区切り、左側だけを研磨しています。右側は研磨前の状態です。
深い傷を、いきなり細かい研磨で追いかけても、底には届きません。 表面が整ったように見えても、傷の浅い部分が残ります。 だから、まず届く方法で浅い傷に置き換え、それをさらに浅い傷へ置き換えていく。 段階を飛ばさないことが、結局はいちばんの近道です。
そして研磨である以上、最後に当てたバフの跡は必ず残ります。 私たちはそれを「ゼロ」とは言いません。 光の下でも気にならないところまで整えて、終える。ごまかさないことも、技術のうちです。
この理屈が分かっていれば、変化が止まったときに「もっと磨く」のではなく、「バフとコンパウンドを変える」という判断ができます。 変えて、確かめる。合っていれば、短い時間で目的に届きます。
私たちが「再現性のある研磨」と呼んでいるのは、この判断を一人の感覚で終わらせないことです。 なぜその方法を選び、どこで止めたのか。理由を言葉にして共有するから、担当者が変わっても、目の前の一台に合わせて考え直すことができます。
MEASURE
「きれいになったかどうか」は、長く技術者の目で判断されてきました。 けれど目による評価は、人や経験、その日の光によって揺れます。
艶とは、塗装の表面で光がどれだけ整って返ってくるかです。細かな傷が残っていると光があちこちに散り、塗装は白っぽく見えます。傷が多いほど、色は白に近づいていきます。
洗濯で濡れた黒いTシャツが、乾いているときより濃く見えるのと同じ原理です。乾いた生地では表面で光が散って白っぽく見え、濡れて表面が整うと光が散りにくくなり、本来の濃い色が見えてきます。
この色の変化を、光の反射から数値で測る道具が分光色差計(測色計)です。たとえば明るさは、0が黒、100が白。黒い車なら、傷が取れて面が整うほど白っぽさが消え、より深い黒の側へ近づいていきます。
一般社団法人 日本コーティング協会では、研磨の評価を目で見るだけに頼らず、より公平に行うために、この測色の考え方を技能試験に取り入れています。CLBの技術者も、協会の試験を通じてこの考え方を学び続けています。
目で見て、光を当てて、数値でも確かめる。
どれか一つに頼らないことが、再現性のある研磨につながります。
※ 測色計の有無や確認の方法は、店舗によって異なります。
CRAFT
判断する力は、磨く力があってこそ生きます。 塗装の状態に合わせて、研磨剤、バフ、ポリッシャー、そして動かし方を組み合わせる。 その幅が、仕上がりを支えます。
毎日のように使うのは、3〜4種類です。けれど「これは合わない」という塗装に、必ず出会います。もう少し硬いほうがいいのか、柔らかいほうがいいのか、水性のほうが合うのか。新車の塗装と、5年、10年と経った塗装とでも相性は変わります。そのときのために、常時10種類以上を備えています。
かつての主流は、軸で強く回転するシングルポリッシャーでした。力がある反面、一点に熱がこもりやすく、バンパーのような柔らかい部分の塗装を傷めてしまう事故も起きていました。現在の主力は、細かな振動で動くダブルアクション。塗装への負担を抑えながら、精密に整えられます。
傷を整える段階では羊毛、仕上げに向かう段階ではウレタン。同じ研磨剤でも、塗装に触れるバフが変われば作用は変わります。ボンネットのような広い面と、ピラーやバイクのような細かな部分とでは、大きさも持ち替えます。
道具をどう当て、どんな速さで、どう動かすか。機械と材料が同じでも、操作が変われば結果は変わります。道具を揃えていることより、目の前の面に合わせて使い分けられること。それを私たちは技術と呼んでいます。
QUESTIONS
新車でも、輸送や保管のあいだについた傷や、塗装面の曇りが見つかることがあります。改善すべき状態があれば磨き、いまの状態のままコーティングなど次の工程へ進めるなら、磨きません。「新車だから」ではなく、その一台を見て決めます。
消すためにさらに磨くことが、その車にとってよいかどうかを考えます。得られる改善と、塗装の残り、お客様のご希望を照らし合わせます。ただし、傷を残すこと自体を目的にはしません。思うように改善できなかった結果を、あとから「残す判断でした」と説明することもしません。目指した状態と実際の結果を、そのままお伝えします。
工程の数だけでは、仕上がりは決まりません。一度で目的に届く車もあれば、傷を整える工程と、その跡を仕上げる工程が必要な車もあります。大切なのは数ではなく、その一工程が何のためにあるのかです。
塗装の状態も、道具の当たり方も違うからです。平面と曲面、樹脂のバンパーと金属のボンネット、過去に補修された場所。同じ方法が合うとは限りません。その場所に合わせて方法を選び、周囲との見え方もそろえます。
目指した改善に届いたか。さらに磨く理由があるか。その二つを見ています。予想と違う反応が出て手を止めるときは、それを完成とはせず、確認し直すか、いったん保留します。
経験で気づき、光を当てて見直し、必要に応じて分光色差計で数値としても確かめる。どちらか一方では決めません。感覚と確認の結果が食い違ったら、前提から確かめ直します。
ENVIRONMENT
黒い車に傷が入ると、そこだけ白く見えます。傷とは、塗装の表面が細かく荒れて、光が乱れている状態。どんな色の車でも、傷は白っぽく現れます。
だから、白い壁と白い光に囲まれた場所では、傷は周りに溶け込んで見えなくなります。暗く抑えた空間で、狙った方向から光を当てる。そうして初めて、傷は輪郭を持ちます。研磨の場所を暗くするのは、雰囲気のためではなく、見るためです。
光も同じです。傷を探すための光と、仕上がりを確かめるための光は違います。施工の前と後を同じ条件で見比べて、ここで終えてよいかを判断します。
※ 施工空間や照明の仕様は、店舗によって異なります。CLBが大切にしているのは、設備の有無そのものより、なぜその環境が必要なのかを、施工する本人が説明できることです。
KEEP LEARNING
研磨は、経験を積むほど自分なりの型ができていきます。それは強みであると同時に、独りよがりになる入口でもあります。長く続けている技術者ほど、気づかないうちに我流になっていることがあります。
だからCLBの認定店は、年に一度の勉強会と、定期的に開く実践会に集まります。オンラインでも、互いの店舗でも。磨きを見せ合い、我流になっていないかを確かめ合う場です。
身につけた日は、ゴールではなく、スタート。
さらに、CLB独自の技術検定と、定期的に技術を確かめ直す更新の仕組みづくりを進めています。どのCLB認定店を訪ねていただいても、同じ考え方で愛車に向き合っている。そのための取り組みです。
ONE SKILL
必要な改善を、きちんと実現する力。
その力を、いつ、どこまで使うのかを考える力。
CLBは、この二つを一つの技術として大切にしています。
その先にあるのは、仕上がった愛車を前にした、お客様の顔です。
気になる傷や見え方、これからの乗り方をお聞かせください。
研磨が必要かどうかも含めて、まずはその車を一緒に見るところから。
OUR POLICY
仕上がりを決めるのは、商品だけではありません。 なぜ選ばれているのか。どう磨くのか。施工のあと、どう守るのか。 CLBの仕事の考え方を、3つのページにまとめました。